役所は業者の言いなりかも。(総合住民サービスシステム構築計画)
[ちょいと古い話になるけれど、千代田区の行政事務のコンピュータシステムの入れ替えにあたって、案がパブリックコメントに付されていた。
区では、区民の皆さんの住民記録・外国人登録・印鑑登録・住民税・軽自動車税・国民健康保険・長寿医療・国民年金・児童手当・次世代育成手当・選挙の処 理を行っているコンピューターシステムを、「総合住民サービスシステム」として新たに作り直す(構築する)ことを計画しており、「総合住民サービスシステ ム構築計画(案)」としてまとめました。
契約の内容からして区に不利な内容だし、技術的にも法的にも問題が多いので、2008年10月に意見を送ったのだが、結局自分ひとりしか意見を寄せていなかった。
最近ちょっと思いあたることがあって、結果を再度見直してみたのだが、法的な部分と技術的な部分はこちらの言うとおりに全部書き直されているのだが、ソフトウエア開発契約そのものの構造については、原案通りで、まったく無視されていた。
結局、最初に契約の骨子が確定していて、費用の概算もおおよそ決まっていて、その後にパブコメに付すからこういうことになるのだろうと思う。結局業者のいいなりで、不利な契約を結んでしまうというのは、どこの役所にもありうる話だ。
どうせどこかの「パッケージ」を導入するのだろうが、委託開発みたいにソフトウエアの開発費用まで払うのに、ソフトウエア上に何の権利も取得しないという、業者にとっては非常においしい契約になっている。(だったら、開発費ではなく、導入費用と使用料にわけて単価を出して、それぞれ契約するべきだろう。そうでないと、費用の根拠があいまいなばかりでなく、責任の所在があいまいになる。瑕疵修補といった問題で、後々こじれそう。)
以下、今回こちらから送った意見の内容。
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ご 意 見 |
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該当箇所
「7.3 知的財産権の取扱」及び「7.4 入札希望者の前提条件」 |
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意見の内容
7.3 知的財産権の取扱
知的財産権に関する基本的な理解に誤りがあるように思われますので、当該項目の再考を求めます。
まず、「データの所有権」との小見出しがありますが、「データ」、すなわち情報は無体財産ですので、「所有権」が成立しません。この点は、誤りです。 ところで、行政事務で扱う個々のデータが著作物(著作権法2条1号、10条)にあたることは、一般的にはほとんどないと考えます。したがって、おそらくここでは、「データベースの著作権」(著作権法12条の2第1項)について言及したいのでしょうから、そうであれば、見出しは、「データベースの著作権」とするべきです。同様に、本文中の「データ」及び「所有権」についての記述も、改める必要があると考えます。
なお、個々の「データ」の取扱いについては、個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30日法律第57号)その他の法令で規律されるところですので、データベースの扱いとは区別してRFPに示すべきと考えます。
次に、「ソフトウエアの著作権」の小見出し以下において、「使用権は…千代田区が持つ」との記述がありますが、著作権には「使用権」の概念がありません。 おそらく「使用許諾を得る」という程度の意味を与えたいだけかと推測しますが、そうであれば、著作物について、どのような支分権を得るのか、たとえば複製 権のほかにどのような権利を行使できるのかといったことを明確にする必要があると考えます。
また、同じ箇所で「ソースコードの複製物を閲覧できる」ようにするとの記述がありますが、ソフトウエアの改良(デバックデバッグや仕様変更)が必要な場合は、著作 者隣接権によって著作者の許諾が必要となるため、この要件定義では区の要求を満たすことはできません。従って、著作権が業者に留保される場合においては、 ソフトウエアを改変できる権利が区に付与されるとの契約が必要となります。例えば、何らかの理由で、ソフトウエアの著作権者にソフトウエアの改良を要求で きない事態に陥った場合(廃業、技術者の退職、高額な費用の請求など)を考えると、ソフトウエアのソースの開示はもちろん、パッケージソフト以外の委託開 発した部分については、ユーザ(区)側で改変が可能とするべきです。
なお、この契約では、区が払った開発費で完成した成果物について、区は利用するだけの権利しか得ないとこになります。他方、業者は、公金で開発したソフト ウエアを、他に販売するなり自由に利用できることになります。あえてこのような契約を結ぶのであれば、このような方式にどのようなメリットがあるのか、特に費用の観点から明確にするべきと考えます。もし今回のプロジェクトに国庫金が入るのであれば、後の会計検査に備えて、このことについて考慮が必要ではないでしょうか。
あるいは、権利関係を明確にするために、パッケージソフト以外の、開発委託に係るソフトウエアの著作権は、区に譲渡されることを契約で明記することが望ま しいと考えます。この場合、ソフトウエアの品質の保証や保守については、瑕疵担保特約で対処できますので、業者が著作権を留保する制作委託契約に比べて も、とくに不具合は生じないと考えます。
7.4 入札希望者の前提条件
責任者の資格として「PMPなど」と示されていますが、PMPは歴史の浅い民間資格であり、「非常に高額な研修費用」や「資格認定における経歴の審査が甘い」など、その制度や能力担保について、多くの議論のあるところです。
国の入札等においてPMPが条件とされることがありますが、その場合も、社会的評価の確立している「技術士」や「情報処理技術者」の国家資格などもあわせて受け入れらているところです。(入札資格にポイント制をとる場合は、これらの国家資格をPMPより高く評価するのが一般的ではないでしょうか。)
今回提示されている区の条件で、「PMP」のみ例示されていますが、例示するのであれば、社会的に広く認知されている資格を列挙することのほうが、資格条件で求められる技術水準を明確にする上で、より望ましいと考えます。 |