株券を手作り

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世の中では、「株券電子化」で大騒ぎですけれど、未だに株券の需要ってあるんですね。とくに、大株主が外国人の場合、株券に限らず社債まで、証券の現物の受け渡しを望むことが多い。

で、今回、大量の株券を手作りすることになったのだけれど、ちょっとしたコツを披露します。

1 用紙をどうするか

(1) サラの紙で

英語に bond paper という言葉があるけれど、これって、もともと証券用紙という程度の意味。今ではコシの強い事務用紙はなんでも bond paper っていうけれど。

日本でボンドペーパーに匹敵する証券用紙といえば、「局紙」だ。この局紙によく似た風合や特性をもつ紙で有名なのが「新局紙」。これって、結構安い。紙問屋の「竹尾」だと、連量100kg/m2のやつが、A4判で31円で買える。少量の印刷だったら、わざわざスカシを入れた局紙をつくると恐ろしい値段になるので、まあ、新局紙あたりで我慢。

(2) 枠入りの「刷り込み」株券で

日本法令は、去年から「枠のみ」の株券用紙を売り出した。1枚あたり210円。結構高い。街のオフセット印刷屋は、そんな高価なものを使っていないで、外枠だけ印刷済みの「刷り込み用」の株券を商業印刷の用紙メーカーから仕入れて、文字部分だけを工場で加刷している。メーカーで有名なのは、封筒や名刺用紙をつくっている会社が多い。たとえば、ハートとか山桜、平和堂あたり。

値段は、紙質と大きさによって違うが、定形判(約210×110mm)で1枚あたり、安いやつで24円程度から、局紙使用の高級品でも50円もしない。まあ、メーカーによって取引条件が違うし、素人お断りの場合がある。

2 印刷方法

たぶんほとんどの人がレーザープリンタを使うだろうけど、インクジェットはやめたほうがいい。株券用紙との相性がいまいちだし、耐久性に問題がある。

で、株券のレイアウトだけれど、株券発行の時期によって法律が改正されていることがあるので、要注意。とくに、会社法施行の前後。

日本法令で、Microsoft Word 用の株券テンプレートが発売されているが、たいした機能はないし、全株懇の標準様式に準拠していないので、あまり期待できない。でも、この商品のいいところは、株券の裏面のレイアウトもあるので、ちょっと手を加えれば使える。最初から罫線ひいたりしないぶん、手間が省けていいかも。それと、表面のレイアウトも、背景を手持ちの株券用紙の画像に変更して使えば、多少便利。自分は、株主名、発行年月日、番号、株数などの表をExcelでつくって、それを差し込み印刷して使っている。こうすれば、大量の株券印刷も楽勝。ナンバリング器不要だし。

3 印鑑

発行者の署名(記名押印)って、株券に必須の記載事項だけれど、自筆や実印でなくてもOK。上場企業なんかだと、最初からオフセットで印影を印刷しているけれど、小部数発行の場合は、プリンタで印刷するのはやめたほうがいい。まず、偽モノを作られたら、見分けがつきにくいので。

それよりも、株券用に印鑑をあたらしくこさえて、それを押印したほうがいい。実物の印影のほうが、器械彫りの場合でも偽造は難しい。朱肉の個性も出るし。

で、朱肉だけれど、速乾性の朱肉や、事務用のふつうの朱肉はやめたほうがいい。よくみると滲んでいるし、色が薄くて退色しやすい。おすすめなのが、「練朱肉」や「印泥」とよばれているやつ。これ、役所では結構使っていた。たとえば、辞令とか賞状の類。(ちなみに、わたしの学部の卒業証書は、印影がオフセットだった。ロースクールの学位記は、なんとレーザープリンタの印影で、ひどくがっかりした。)

日本のメーカーの印泥には、落款用、公用、証券用などの区分がされていることがあるが、製造元に問い合わせたら、この違いは、含まれている朱の濃度(=価格に反映)によるらしい。落款用は濃く赤く、証券用は薄いため若干黄色味を帯びている。

ちなみに、市販の事務用朱肉や、印刷屋が印刷する印影は、薄い印泥の色をモデルにしているので、若干黄色っぽい。他方、紙幣(日銀券)は、濃い印泥に似せているので、色が赤い。

以下、シャチハタさんからのお返事。

練朱肉は、複数の顔料を組合せて使用しております。使用する顔料が高級なものを多く使用するほど、色が分解しにくく、長く印影を残すことが出来ます。よって、練朱肉は、値段が高価なほど、印影の耐久性が高いものとなります。又、色目に関しましては、赤の色目が高級とされてきました。その為、極上落款用の色目は、赤くなっております。

よって、文書用,公用,証券用の順に高級顔料の量が少なくなります。今回の3つの練朱肉の中では、文書用が、一番長期保存に優れた朱肉となります。色目は、公用が赤に近い為、格式高い印影に見えます。

好みの問題だけれど、株券では、古色や落款用の印泥の色は、あまり使われていないようだ。中国や台湾とは大違いだ。

そういえば、御璽の押捺では、たいそう念入りに印泥を練ったあとに、印矩(いんく:印鑑定規)をあてていた。角印を使う場合は、印矩を使った方がいい。だいぶ効率があがる。丸印の場合も、使うと位置決めが少し楽になる。

4 印紙税

印紙税の納付は、印紙貼付、申告納付(書式表示)、印紙税納付計器のほかに、「税印」という方法がある。一部の税務署に限られるけれど、印紙税を現金で納付すると、印紙税税印という「浮きだしプレス」を課税文書に押捺してくれる。これだと、券面の文字を損なわないし、証券のスペースが小さい場合にとっても便利。けっこうめずらしがられるので、株券マニアにも喜ばれる。

念のため言っておくけれど、印紙のデザインは、まれに変わるので、日付を巻き戻して株券をつくる場合は、注意した方がいい。過怠税をとられたり、場合によっては、効力を否定されることだってありうる(司法研修所の「民事訴訟における事実認定」(法曹会)には、印紙の意匠と文書成立の時期が違うことから、書証の偽造を見破った例がのっている。この本、最高におもしろいよ。)。

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